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武原 夏子
玉川大学農学部卒。元・日本不耕起栽培普及会理事・事務局長。不耕起移植栽培や田舎暮らしの楽しみを教えています。農産物の差別商品化や売上増加コンサルをしています。手作り、田舎の食や暮らしが大好き。伝統食大好き。農家のじいちゃん大好き。都会暮らしでは、命と精神が縮んでしまう。ずっと満員電車に乗らず、朝に出勤しない生活を望んできたら、そうなった。ナチュラリストでも何でもないのに、化学物質過敏症、合成添加物過敏症、合成洗剤アレルギー、シックハウス症候群。さらには、憑依体質。宇宙とのつながりについて、いつも考えています。

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田んぼには4ヵ月しか水を入れない


日本中の多くの水田地帯では、

年のうち6ヵ月は、乾田(かんでん)です。

 

p1010026tr

 

田んぼに水を張るのは、

田植え前から初夏、

夏の終わりから稲刈り前まで

わずか4ヵ月です。

 

稲刈りの時、大型重機であるコンバインを

田んぼに入れる必要があるためです。

 

農作業の機械の都合、

作業の手順に合わせ、

田んぼに水を入れたり抜いたり

できるようになっているからです。

 

水田地帯では、給水のパイプラインの

バルブをひねれば水が出て、

暗渠(あんきょ)の栓を抜けば、

水を抜くことができるのです。

 

Photo by Natsuko Takehara

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 


冬期湛水水田(とうきたんすいすいでん)


冬期湛水(とうきたんすい)というのは、

冬の間、水を湛えている、

水を張りっぱなしにすることです。

 

あえて、稲刈り後の田んぼに

水を張っておくのが、

冬期湛水水田というわけです。

 

農業用語では、

冬期湛水と言いますが、

野鳥や自然環境保護の視点では、

冬・水・田んぼとも呼ばれています。

 

冬期湛水の取り組みが始まったのは、

1998年の稲刈り後、宮城県でのことです。

 

マガンやハクチョウなどの渡り鳥が、

冬に湛水した田んぼを、

ねぐらに利用しないだろうかという

実験的な取り組みからでした。

 

結局、ねぐらにはしませんでしたが、

日中、休憩場所に利用を始めました。

 

翌年、田んぼの雑草の生える量が

少なくなりました。

 

冬期湛水で抑草できるのでは?

という期待が持たれました。

 


冬期湛水による田んぼの生きものの変化


翌年の秋から、

全国各地の不耕起栽培農家が、

冬期湛水を試験的に始めました。

 

各地から、様々な現象が報告されました。

 

福島県郡山市の田んぼでは、

1999年12月に冬期湛水すると、

ハクチョウがやってきて、

ねぐらにするようになりました。

 

Pnoto by Kiyo Nakamura

郡山の田んぼのハクチョウ 写真提供:中村喜代

 

 

各地で、渡り鳥や留鳥が

立ち寄るのが目撃され、

動物や肉食の鳥も現れました。

 

2001年の秋に初めて湛水した

千葉県の不耕起田んぼでは、翌年の春

ニホンアカガエルのたくさんの

卵塊(らんかい)が見つかりました。

 

Photo by Natsuko Takehara

 

前年まで、この田んぼに

ニホンアカガエルはいませんでした。

 

ニホンアカガエルはレッドリスト

(絶滅が危惧される動物)です。

 

Photo by Natsuko Takehara

 

関東では2~3月の早春に、

水の中で産卵するため、

各地の水田地帯から姿を消したカエルです。

 

田植え後、小さなニホンアカガエルが、

田んぼでたくさん観察できました。

 

p1010042tr

 

その後の観察で、冬期湛水の田んぼでは、

ミジンコが田植え頃の一時期に

大量発生することもわかりました。

 

藻類や浮草の発生状態も変わりました。

サヤミドロという繊維の太い藻が、

時には大発生しました。

(上の写真でニホンアカガエルが乗っている藻です)

 

明らかに生態系に変化が起きていました。

 

この田んぼで、

6月に生きもの調査をしました。

 

冬期湛水をしていない田んぼに比べ

イトミミズとアカムシ(ユスリカの幼虫)が、

大量に棲んでいることがわかりました。

計算上は、10アール当たり、
イトミミズ 220万匹
ユスリカ 120万匹

イトミミズは、危険を感じると、

10~20cmぐらい土に潜るので

データの正確さはわかりません。

 

小さな昆虫や巻貝やシジミ貝の仲間も、

田んぼの土の中にいることが確認されました。

 

 

イトミミズが土の中の有機物を食べ、

お尻から吐き出す糞や、アカムシの糞が、

トロトロ層を作っていることが、

その後の調査や文献からわかりました。

 

不耕起の田んぼは肥料まで製造していたんです。

 

 

田んぼに水を張り始めた秋口には、

微小な昆虫やダニ類などの分解者が、

大量発生するのも目撃しました。

 

ダニ類と聞くと吸血や寄生を、

イメージするかもしれませんが

大半は吸血しません。

 

多くのダニ類は土壌で生活し、

枯葉などの有機物やその分解物、

菌類、生きものの死骸を食べています、

 

私が冬期湛水の田んぼで出会った、

小さな昆虫やダニ類は、

わらや、わらを分解する菌類を

食べていたのだと思います。

 

Photo by Natsuko Takehara

 

 


緩速ろ過の浄水場の仕組みは生物ろ過


 

水道水を作る方法に、

緩速ろ過(かんそくろか)方式という

仕組みがあります。

 

約200年前にスコットランドで、

実用化が始まり、

1829年、ほぼ完成されました。

 

当時のイギリスは、産業革命の影響で、

人口が都市に集中し工業化が進み、

河川が汚れ、飲み水のもとが汚れていたので、

新しい浄水システムが採用されました。

 

 

当時は、砂でろ過ができると、

考えられていたようで、

slow sand filtrationと呼ばれていました。

 

日本には、5521の浄水場があり(平成24年)、

緩速ろ過方式は、548か所もあるんですよ。

 

日本では明治時代に導入されました。

 

東京の淀橋浄水場も日本で2番目にできた、

緩速ろ過方式の浄水場だったのです。

 

日本でも、砂でごみや雑菌を

取り除くと思われていました。

 

ところが、緩速ろ過の本当の仕組みは、

水の「生物ろ過」だったんです。

 

Nobutada Nakamoto

資料提供:中本信忠

 

 


生物ろ過の仕組み


 

緩速ろ過の浄水場では、

沈殿槽で水中のごみを落とします。

 

砂を敷き詰めたろ過槽に水を移して、

ゆっくりした速度で移動させます。

 

すると微小昆虫や微小生物による

食物連鎖が砂の表面で起こります。

 

小さな生きものが

より小さなものを食べます。

 

クリプトスポリジウムのような原虫、

病原性大腸菌などの病原菌も

食べられていなくなります。

 

小さな生きものの糞は、

砂の目を通りろ過槽の底に沈みます。

 

水の中の窒素、リン酸、カリや、

ミネラルを含む栄養分も

藻類や植物プランクトンが吸収します。

 

 

緩速ろ過池で繁殖して増える

メロシラという藻類は砂の上を覆って、

砂の目詰まりを防止します。

 

メロシラや植物性プランクトンは、

光合成を行って、水中に酸素を放出し、

酸素は、砂の中に住む微小生物に消費されます。

 

Nobutada Nakamoto

資料提供:中本信忠

 

生きものが活動する温度と水深、

水の速度でろ過の効率が変わります。

 

生きものろ過で、何も含まず、腐らない、

生で飲めるおいし水を

作ることができるのです。

 

 


不耕起冬期湛水水田と緩速ろ過


Nobutada Nakamoto

写真提供:中本信忠

 

緩速ろ過の日本で唯一の研究者

中本信忠先生と初めてお会いしたのは、

2003年の春でした。

 

当時、中本先生は信州大学の

応用生物科学科の教授でした。

 

不耕起栽培の田んぼに来ていただき、

中本先生から緩速ろ過の仕組みをお聞きして、

私たちは、大変びっくりしたのです。

 

緩速ろ過で水を生物浄化する仕組みが、

不耕起の冬期湛水水田で見てきた状況と

そっくりだったのです。

 

 

田んぼは水を浄化しているのではないか?

冬期湛水で、さらに浄化するのではないか?

 

私たちがずっと考えていたことが、

中本先生の話を聞いて、

本当だという確信を持ちました。

 

田んぼの取水口では

水が少し生臭くても、

田んぼの水が臭うとは感じません。

 

川が雨などで濁っている時には、

パイプラインの蛇口から出る水が、

濁っていることがあります。

 

けれども田んぼの水は、

濁っていないのです。
田んぼで稲と生きものたちが、

水を浄化している!

 

生きものろ過の力はすごい!

と思いました。

 

Nobutada Nakamoto

資料提供:中本信忠

 

 

アジアやアフリカでは、

中本先生の指導で、

緩速ろ過装置が設置され、

生水が飲める地域が増えました。

 

私には、中本先生の活動が、

福岡正信さんが粘土団子で、

世界の砂漠を緑化していったことと、

とても重なるんですよ。

 

福岡正信さんは土と緑、

中本先生は水。

 

素晴らしいと思いませんか?

 


家庭や地域で緩速ろ過


 

私は中本先生に何度もお会いして、

安全な飲料水を自給できると思いました。

 

私は災害に備え家庭や地域で

小さな緩速ろ過の浄水施設を

持つと良いと考えてきました。

 

私の考えにピッタリなのが、中本先生が考案された、

実験用の小さな緩速ろ過装置でした。

 

Nakamoto Nobutada

資料提供:中本信忠

 

中本先生も実験を繰り返し、

実用化できるところまで来たようです。

 

 

浄水場の見学をしたり小型の緩速ろ過システムを

作ってみたいなと思っています。

 

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武原 夏子
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玉川大学農学部卒。元・日本不耕起栽培普及会理事・事務局長。不耕起移植栽培や田舎暮らしの楽しみを教えています。農産物の差別商品化や売上増加コンサルをしています。手作り、田舎の食や暮らしが大好き。伝統食大好き。農家のじいちゃん大好き。都会暮らしでは、命と精神が縮んでしまう。ずっと満員電車に乗らず、朝に出勤しない生活を望んできたら、そうなった。ナチュラリストでも何でもないのに、化学物質過敏症、合成添加物過敏症、合成洗剤アレルギー、シックハウス症候群。さらには、憑依体質。宇宙とのつながりについて、いつも考えています。